次のような国に生まれたら、どうするだろうか?
-------------以下引用
貧民に共通するたったひとつの希望は子供の教育。その希望さえも裏切る教育制度の汚職。
徴収した税金を制度的に山分けする税務署。
金さえあれば悪を正にし、告訴文献消滅など朝飯前の司法機関。
賄賂なしでは動かない警察。
法的に自由裁量の権限を拡大しては収入源とし、民間企業や一般市民の経済活動を妨げる国家公務員。
泣きたいほどひどい話は尽きなかった。
『国をつくるという仕事』 西水美恵子著(2009) 英治出版 より
-------------引用終了
念のため、これは21世紀に入ってからの話です。
どこの国なのかというと、パキスタン。
で、
著者の西水さんと「将軍」は、次のように「作戦」をたてるのです。
-------------以下引用
どれもこれも改革せねばと憤る将軍に、戦敵と戦略は同意するが、作戦がないと文句をつけた。
軍政権だからこそ民の支持が重要だと考える。
どこから手をつけていいのか迷うほどひどい状態でも、戦線が多すぎる。
人間は変化に不安を感じて嫌うから、改革は柵しがらみの損得抜きに誰にとっても痛い。
「負け戦で当たり前だな、おもしろい!」と将軍が軍人の声で受けた。
勝ち戦に変えよう。
戦線を絞って勝利の連鎖反応をねらい、改革の痛みに挑戦する勇気を育む。
国民がすぐ肌に感じうる教育や公衆衛生医療改革。
民間企業か改革の成果を早めに糧とできる銀行改革や税務署改革。
「プラスの成果が早く出る改革から手をつけるのが作戦だな」。二兎を追う者は一兎をも得ず。
さすが将軍、軍服が似合うと感服した。
緻密な相互関係が経済機構と市場の常だから、本気本腰の改革ならば、その輪は必ず他の部門に広がると言うと、うなずいた将軍が補った。
「国民の参戦も作戦のうちだろう。多くの人々に手伝ってもらわねばできない改革ばかりだ」。
-------------引用終了
「将軍」とは、のちのムシャラフ大統領のこと。
私は、彼を「アメリカが実施したタリバン掃討時に協力した大統領」程度にしか、知りませんでした。
ですが、
無血クーデタののち、大統領となってからの内政に「そんな」取り組みをしていたなんて、自分の知らなさ加減に恥じ入るばかり。
西水さんのこの本、既に5年以上前に出版されていたもの。
今読んでも、思わず「感極まってくる」場面が幾度と登場してきます。
(最後に「解説」を書いている田坂広志さんの文も、リーダーには是非読んでもらいたい、そんな名文です。)
無印のスタッキング・シェルフに置いておきます。
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今日の南アルプス(↓11:00撮影)。
今日のストームグラス(↓)。