昨年、一昨年と年末の営業最終日のブログでは、来し方を振り返り、行く末に思いを馳せるような、そんな内容でした(_ _)。
しかし、今年は違います。
今年一年で「これは凄い!?」と、脱帽した一冊をご紹介します(↓)。
『全国マン・チン分布考』 松本修著(2018) 集英社インターナショナル新書
著者の松本修さんのお名前をご存じの方は、テレビ好き、それも視聴者参加型バラエティ番組のファン(かも)。
はたまた、名著の誉れ高い『全国アホ・バカ分布考』で、【周圏分布論】によって明らかにされた日本列島の言語分布構造の解明---その著者として知っているかもしれません。この本はまさに目から鱗でした(当店の青棚に置いてあります)。
で、
ご本人は、実はTVプロデューサーなんですね。
さて話は、今から23年前に遡ります。
彼が担当していたTV番組「探偵!ナイトスクープ」(朝日放送・テレビ朝日系)に視聴者から一通の依頼が寄せられます(この番組は今も続く、ご長寿番組)。
依頼者は23歳の女性。松本さんが番組への依頼を、より完成度を高めた「全国アホ・バカ分布考」としてまとめていたので、次のような依頼状を寄せたのでした。
----------引用開始
京都の母が送ってくれたお饅頭がなくなったので、東京・新宿のオフィスで、
「私のおまん、どこにいったか知りませんか?」と、たずねました。
「私のおまんがないんです」
「おまえ、昼間っから何言ってんだ!」
職場では大騒ぎ。京都では「おまん」は、主に女性が使う、キレイで上品な言葉なのに。
もうこんな、恥ずかしい思いをするのは嫌です。
「全国アホ・バカ分布図」みたいに、その言葉の全国方言分布図を作ってもらえませんか。
----------引用終了
京都の繁華街、新京極で修学旅行生、それも関東方面からやってきた中学・高校の男子生徒が、お土産屋さんの若い女の子の、
「おまん、買うてくれやすぅ~。」
を聞いて、
「おいおい、京都ってすげぇ~なぁ~」
と感動する話---みうらじゅんさんのコラムで読んだ記憶があります(^_^)。
また、今年は扶桑社から『夫のちんぽが入らない』が単行本で出版されたため、話題を集めました。
どーゆーふーにかって?
イヤラシイオジサンたちが、若い女子の書店員にわざわざ、この書名を口にさせようとするのだそう。
「あぁ、なんだっけ。あの『こだま』っていう人が書いた本? なんて言ったっけ?」
「先月、扶桑社から出た本でさぁ、あの、アレだよアレ! なんて言ったっけ?」
「同人誌から一般書籍化された、あのチンチンの本、アレなんて言ったっけ?」
そう、これらはすべて最後に、「なんて言ったっけ?」ということで、書籍名を口にさせようとする魂胆がありありです。
なんと、13万部も売れたんだそうな!(*゚д゚*)
閑話休題。
さて、
依頼はきたものの、それを「探偵」が捜査するテレビ番組の「探偵!ナイトスクープ」としては放送できない---放送禁止用語という自主規制によって、ボツになります。
しかし、
松本さんは京都を中心とする【周圏分布構造】をモノにしたことによって、この依頼を忘れることなく、放送はできないけれど、書籍としてならば刊行できる---地道に研究を進められます。
幸い、『全国アホ・バカ分布考』での印税が3000万円あって、それを原資として自腹で調査研究に邁進(このへん、関西人のリアリズムを感じます)。
今回の「マン・チン」分布でも、やはり京都を中心とした【周圏分布論】という仮説から調査を開始。
そして、こんな境地に至るのです。
----------引用開始
私はテレビ界にあって、自主規制の枠の中で特に何の考えもなく、安穏と仕事をしてきた人間です。
しかし、ひとり静かに勉強を進めるうちに、数百年、千数百年にわたって日本人という民族が、女陰・男根語を命名するにあたって、つねに一貫して品位ある美しい心性をもって臨んできたことを知るに至りました。
そうなると私は、これを日本人の誇りとして、はっきり世に示さない限り、死んでも死にきれない、強い信念に突き上げられるようになったのです。
----------引用終了
彼は、最近の風潮を危惧しています。
テレビを見ると、小林製薬が商品CMにおいて、アソコを指す言葉を「デリケート・ゾーン」なる和製英語で放送規定をクリアしてしまっていること。
出版業界では、「たまごクラブ」・「ひよこクラブ」を擁するベネッセが、赤ちゃんのアソコを「オマタ」と称して、普及に励んでいること。
はたまた、一部においては「ペニス」がラテン語であることから、女性のアソコもラテン語の「バルバ」と称そうという動きがあること。
これらに対し、松本さんは自らの調査研究を踏まえて、
----------引用開始
かわいさ、美しさ、いとおしさを極めつくした「オマンコ」、格調と気品に満ち、究極の表現でもあった「オソソ」は、この研究が端緒となって、再び婦女子の言葉としての栄えある復権を果たすことができるのでしょうか。
(略)
新しい時代に合った、かわいく、愛らしく、品格もあって、誇らしく感じられる、麗しき日本語が生み出されるのでしょうか。
私は女陰語の輝くべき未来を心から期待してやみません。
----------引用終了
と、述べています。
この新書、スタッキング・シェルフの「例の」BOXに置いてあります。
今年一年、ありがとうございました。よい年をお迎えください。
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今日の南アルプス(↓11:00撮影)。
今日のストームグラス(↓)。
今年最後のオ・マ・ケ。
先日、録りだめてあった古い映画の中から、「スリーメン&ベビー」を見ました。かれこれ30年ほど前のアメリカのコメディ映画です。
すると、どうでしょう。
「ベビー」の「おまん」が人種に関係なく、お饅頭由来の「おまん」であることが目視できるのでした(_ _)。