2003年の大学入試センター試験「地理A」で、次のような問題が出題されました。
「母語以外の言語で会話できる国民の割合を言語別に示した図」をもとに、オランダ・デンマーク・フランスの正しい組み合わせを選ぶという問題。
これは、業界的には「難問」として位置づけられました(誰が判断したの? たぶん正答率の低さから、でしょ)。
ヒントとしてスウェーデン・ベルギー・ドイツにおいて各言語で会話できる人の割合が示されています。
よ~くみるとスウェーデンでは英語が50%以上、デンマーク語・ドイツ語・フランス語を話せる人も5~20%います。
ベルギーでは英語・フランス語を20~50%の人が話せるし、ドイツ語・オランダ語・イタリア語でも5~20%の人が話せます。
それに対してドイツでは「特になし」の人が50%以上を占めています。
ここでいう「特になし」とは【母語以外の言語は話せない,ということ】です。それでも英語は20~50%の人が話せるとなっていますが、スウェーデンやベルギーと比較して、「特になし」の人が多いことに気付きます。
実は、このことが【オランダ・デンマーク・フランス】の組み合わせ問題にとってのヒントなのです。
つまり、スウェーデン・ベルギー・ドイツのヒントから次のことを読み解かなければなりません。
1.人口が多く,経済的・文化的影響力の大きな国は,自国の公用語以外は話せない国民が多い。
2.人口がそれほど多くない国では,複数の言語を話せる国民の割合が高く,特に交流の深い近隣諸国の言語において顕著である。
国際社会におけるプレゼンス(存在感)が、言語習得の鍵になっているということです。
その意味で言うと、選択肢の中から「特になしが50%以上」のCがフランス。
Bよりもスウェーデン語の比率が高いAがデンマーク(「北欧諸国」として括ることができます)。
残りBがオランダ(Aよりもフランス語比率が高いので、間にベルギーを挟むもののスウェーデンよりは近接しています)。
よって、正解は【③】。
そ~そ~、問題を解くのではなく、この図から日本においてマルチリンガルを増やすためのヒントを読み取らなければいけませんでした。
日本は2008年以降、人口が継続して減少する国になっています。
国立社会保障・人口問題研究所の試算でも日本の将来推計人口は、「見事」なまでに減少することが指摘されています。
いまでこそ1.2億人程度の人口規模を誇っていますが、これだけの人口規模がある故に、「国内市場」だけで何とかなっているのです。
別に外国語がしゃべれなくても何とかなるという豊かな社会・市場が日本にはあるのです。
いっぽう、上の問題で出てきているスウェーデンは人口950万人、ベルギーは1000万人程度。
神奈川県よりもちょっとだけ人口が多い独立国なのです。
国内市場が狭いのは、あきらか。
で、
どうするか?
外国に打って出る。
そのために必要なのは、外国語。
つまり英仏独との比較において「小国」であるスウェーデンやベルギー、デンマーク(人口550万人)、オランダ(人口1700万人)は、「必要に迫られて」近隣の「大国」の言語を習得しなければやっていけない---という判断がなされているからでしょう。
翻って、日本。
国内市場が収縮していく中で、「お外」で稼がなければなりますまい。
されば、「必要に迫られて」英語・中国語を習得しなければならない現実がもう「そこらへん」まで来ているのではないでしょうか、ねぇ。
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今日の南アルプス(↓11:00撮影)。朝から雨で、下界が見えません。
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