平成26年版の自殺対策白書では、47都道府県別のデータを公開しています(↓)。

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山梨県が突出しているのは、「青木ヶ原樹海」があるからでしょう。

自殺にも様々なスタイルがあって、決行場所で大まかに分けると、

約50%が自宅で首吊り、薬物使用、

約40%が近場の高層ビルや線路への投身、

残りの10%弱が海や山へと出かける「出張自殺」なのだそうな。

その「出張自殺」として人気があるのが、山梨県の富士山北麓に広がる青木ヶ原樹海。

実は以前に読んだ本、『からくり民主主義』 高橋秀実著(2002)草思社刊 でのレポートに触発されて、山梨県南都留郡足和田村(現・富士河口湖町)の西湖民宿村まで伺ったことがあります。それも積雪があった2月。

民宿村から雪を踏みしめた足跡が樹海の中へと続いている・・・・・・・。

跡をたどってみました。

(以下略)







さて、

『生き心地の良い町~この自殺率の低さには理由がある』 岡檀(おか まゆみ)著(2013) 講談社刊

の中で著者は地図会社の協力を得ながら、自殺率を左右する要因を本人属性とは別に、次のように抽出します。

-----------------以下引用(強調BLOG主)

解析の結果、自殺率を高めたり低めたりするのにもっとも影響をあたえていたのは「可住地傾斜度」であり、次いで「可住地人口密度」「最深積雪量」「日照時間」「海岸部属性(海に面していること)」の順であった。

このうち可住地傾斜度と最深積雪量は、その値が大きくなるほど地域の自殺率が高くなり、その反対に、可住地人口密度と日照時間、海岸部属性については、値が大きくなるほど自殺率が低くなるという傾向を示していた。

これらの結果を総合すると、日本の自殺希少地域の多くは、「傾斜の弱い平坦な土地で、コミュニティが密集しており、気候の温暖な海沿いの地域」に属していると解釈することができる。

また、日本列島を取り巻く海洋を五つの海域に分割した場合、自殺希少地域は太平洋沿いの自治体にもっとも多く存在することがわかった。

自殺多発地域の特徴はこの逆である。

険しい山間部の過疎状態にあるコミュニティで、年間を通して気温が低く、冬季には雪が積もる地域」に多いという傾向が示されている。

自殺希少地域である海部町、自殺多発地域であるA町の地理的特性の差異は、まさにこの対比に当てはまっている。

-----------------引用終了

都道府県別のグラフでも、青森・岩手・秋田・新潟・島根等が該当しており、特に秋田は県をあげて自殺対策を推し進めてきたのは、周知の通り。

地域のコミュニティの大切さが喧伝される中、著者はその「質」にも言及しています。

それは「絆」とか「つながり」といった、もてはやされやすい言葉について、です。

-----------------以下引用(強調BLOG主)

自殺希少地域にも多発地域にも同じように「絆」や「つながり」があるのだとすれば、それらは必ずしも自殺を抑制する要素として機能していない、という理屈になる。

私は、人々が「絆」「つながり」と呼んでいるものの本質やそれに対する人々の意識に、地域によって差異があるのではないかと考え始めた。

試行錯誤しながら研究を進めた結果、自殺希少地域である海部町では、隣人とは頻繁な接触がありコミュニケーションが保たれているものの、必要十分な援助を行う以外は淡泊なつきあいが維持されている様子が窺えた。

対する自殺多発地域A町では、緊密な人間関係と相互扶助が定着しており、身内同士の結束が強い一方で、外に向かっては排他的であることがわかった。

二つのコミュニティを比較したところ、緊密な絆で結ばれたA町のほうがむしろ住民の悩みや問題が開示されにくく、援助希求(助けを求める意思や行動)が抑制されるという関係が明らかになった。

つまり、二つの地域の住民は同じように「絆」や「助け合い」という言葉を口にしていたが、その本質には大きな差異があったのである。

このことを通して私は、通説の功罪について考えるようになった。

人との絆が自殺対策における重要な鍵であるとする主張自体は、まったく間違っていない。

私自身もまた、かつてはこの通説をよく引用していた。

ただし今ふり返って思うのは、その言葉を引用するだけであたかも何かを伝えた気になって安心してしまい、思考停止してはいなかったかということである。

よりこまやかに内容を検討し、さまざまな場面に当てはめて検証していくという作業を、かつての私は怠っていた。

通説にはこれを用いる人々の思考を鈍らせるという副作用がある。

それが耳触りのよいメッセージである場合にはさらに用心すべきであることを、肝に銘じておきたいと思っている。

-----------------引用終了

いますよね、常に正論を吐いていい気になってる人。

だれもそれに異は唱えられるはずもなく、かといって状況が良くなるはずでもないのに、「それ」を言うことで何か事態が良くなっているような錯覚になって、結局、なにも改善されずじまいのコト。

いつまでたっても変わらないことと、変えるべきコトとのバランス、「不易流行」がわかっているところは、たぶんこれからも大丈夫でしょう。

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今日の南アルプス(↓11:00撮影)。

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今日のストームグラス(↓)。

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