教育社会学者の苅谷剛彦さんが編著者になっている書籍、

『「地元」の文化力』 苅谷剛彦編著(2014) 河出書房新社刊

を読んでいたときのこと(そもそもこの本、内容から見て苅谷氏が一枚噛んでいるのはなぜだろう? と思ったのが購入動機)。

苅谷氏以外に7名の大学教授等が執筆分担して、日本各地をフィールドワークしたレポート集。

対象地域は、

岩手県遠野市 「遠野物語ファンタジー」

長野県飯田市 「いいだ人形劇フェスタ」

北海道壮瞥町 「昭和新山国際雪合戦」

沖縄県那覇市と周辺 「琉球國祭り太鼓」

茨城県取手市 「取手アートプロジェクト」

あ~ら、飯田市が入ってる。

下伊那地域に住んで9年目を迎えていますが、皆さんの「意識」を私が意識することも特別なかったので、興味深い記述に、「へぇ~~!」の連続。

特に、吉川徹氏のこのあたり(↓)。

-----------------以下引用(強調BLOG主)

やはりここでも、親、子、孫……と何代にもわたって「高校を卒業したら、ひとまず飯田を出る」という流れが続いているようだ。

しかも飯田の場合は、そうした都市流出を経て地元にUターンしてくる経路を、たいへん好意的にみている様子がうかがえる。

地域にずっと定住している人たちと、都会暮らしの経験者とのコンフリクトはあまり目立たず、どちらも地元の人という共通性で緒ばれているように感じられるのだ。

むしろ、Uターンしてきた人たちが地域の将来構想、行政運営、さまざまな市民活動を担う人材として随所で活躍している様子がみてとれた。

若年層の流出先としては、距離の近い松本市や県庁所在地である長野市もあるのだが、飯田が県内で存在感を発揮することは、それほど重視されていないようにみえる。

かといって、天竜川下流の三遠地域、高速道路でつながる中京圏との関係が特段に強いわけでもなさそうだ。

そうした近隣地域間の分散的な力学もあってのことか、どうも「飯田を動かす人材になるには、県立飯田高校から首都圏の大学に進学することが条件だ」というような見方があるようだ。

現市長が進学流出から財界経験を経たUターン経歴をもち、その改革積極路線が市民に支持され、多選が実現していることは、これを象徴するものといえる。

要するに飯田には、中京圏の経済でも、長野県内の行政でもなく、ダイレクトに東京のエリート性を見据える土地柄があるのだ(*9)。

こうした傾向は、全国の城下町で、旧藩校に由来する公立進学校をもつところではしばしばみられる。


(*9) 飯田市は結い(UI)ターンプロジェクトとして、都市部からの人口の受け入れの取り組みを行っている。

そこでは純粋な意味でのIターンを受け入れることも積極的に考えられている。

飯田の人は「よそ者」に概して親切で、とても付き合いやすい。

きれいな水が随所に流れており、東西の山が美しく、利便性も確保されているという点で、多くの人が魅力を感じ
る地方都市であることはよくわかる。

-----------------引用終了

これを執筆した吉川(きっかわ)徹氏は大阪大学教授。

私は初め、同姓同名(漢字表記)の吉川(よしかわ)徹氏を思いついた。

元望月町長の吉川徹氏はこーゆーことも研究してるんだぁ!--などと思って、奥付を見ると別人でした(因みに、吉川(よしかわ)徹氏は、元東大総長・吉川弘之氏の実弟)。

「権威に弱い」人が多いという印象は、こーゆーふーなエリート性信仰の裏返しであるわけですね(これも、かつて中心性のあった地方都市に共通するメンタリティ)。

じゃぁ、どれくらいの学生が頭脳流出しているのか?

先日(9月中旬)の地元紙(南信州新聞)によれば(↓)、

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地元で就職を希望している生徒 407/1543 

ほぼ1/4のみ(へぇ~、男子のほうが地元に就職を希望している数、多いんだ)。

残り、3/4は流出か。

そのうち環流(Uターン)してくる生徒の割合ってどれくらいなんだろう(追跡調査している高校って、ないんじゃない? 行政はしているかもしれんが)?

「地方出身の若者たちは、有為な人材であればあるほど流出先の都会で自分を生かす場をみつけてしまい、なかなか都合よく地元に戻ってきてはくれない。」

という指摘もある(吉川徹)。

誤解の無いように断っておくと、Uターン組が「有為」な人財じゃないから、地元に戻ってくるというわけではありません。生徒個人それぞれの持つバックグラウンドが、「そう」たらしめているんです。

そーゆー人財をどう配置して、活躍の「場」を用意するか。

これって「地域」のマネジメントそのものですね(それも行政だけじゃできない、かといって民間だけでもできない、隙間のNPOでも)。


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今日の南アルプス(↓11:00撮影)。日本中、「晴れ」模様。

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今日のストームグラス(↓)。

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