『銀翼のイカロス』 池井戸潤著(2014) ダイヤモンド社刊 を図書館ネットで予約したのが、数ヶ月前。
私の順番は28番目だったので、気長に待つことにしました。

同時に『ロスジェネの逆襲』も検索してみると、こちらはいつでもすぐに借りられそうです(出版が2012年で貸し出し予約のピークはもう過ぎたらしい)。

ようやく「予約確保」の知らせが来たので、借りてきました(↓)。

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テレビの最終回はあんな幕切れで、東京セントラル証券へと出向することになった半沢直樹の「その後」を描いた上記の2冊、まとめ読みです。

2冊にわたって半沢直樹の活躍が描かれた、「胸のすくエンターテイメント企業小説」です(私は行員経験がないので、実際はどうなのか、詳しいところは知りませんケド)。

そんな中、『ロスジェネの逆襲』で半沢直樹が団塊世代をどう思っているのか、語っている場面があります。

-------------以下引用

「オレたちは新人類って呼ばれてた。

そう呼んでたのは、団塊の世代といわれている連中でね。

世代論でいえば、その団塊の世代がバブルを作って崩壊させた張本人かも知れない。

いい学校を出ていい会社に入れば安泰だというのは、いわば団塊の世代までの価値観、尺度で、彼等がそれを形骸化させた。

実際に彼等は、会社にいわれるまま持ち株会なんてのに入って自社株を買い続け、家を買うときには値上りしたその株を売却して頭金にできたわけだ。

バブル世代にとって、団塊の世代は、はっきりいって敵役でね。

君たちがバブル世代を疎んじているように、オレたちは団塊の世代が鬱陶しくてたまらないわけだ。

だけど、団塊世代の社員だからといって、全ての人間が信用できないかというと、そんなことはない。

逆に就職氷河期の社員だからといって、全て優秀かといえば、それも違う。

結局、世代論なんてのは根拠がないってことさ。

上が悪いからと腹を立てたところで、惨めになるのは自分だけだ」

 「部長はどう考えてたんですか。組織とか会社とか」

 「オレはずっと戦ってきた」

半沢はこたえた。

「世の中と戦うというと闇雲な話にきこえるが、組織と戦うということは要するに目に見える人間と戦うということなんだよ。

それならオレにもできる。

間違っていると思うことはとことん間違っているといってきたし、何度も議論で相手を打ち負かしてきた。

どんな世代でも、会社という組織にあぐらを掻いている奴は敵だ。

内向きの発想で人事にうつつを抜かし、往々にして本来の目的を見失う。

そういう奴らが会社を腐らせる」

 「諸田次長のようにですか」

 「その通り」

-------------引用終了

バブルの恩恵のない仕事に従事してきた身(あっ、私のことです)としては、「逃げ切り」体勢に入っている世代(=団塊)を半沢直樹と同じようにみているフシがあります。

(バブル期に人事院勧告で、多少はイロがついたのかもしれないけど、質素なモンですよ。)

バブル期の様相を「勘違いしたビンボー人のお祭り」だと思っている私としては、「もう、いいです。」が実感。

で、

下の世代、ロスジェネ(Lost Generation)を半沢直樹がどう見ているのかというと、これ、暖かい視線なんです(↓)。

-------------以下引用(長いですぜ)

 半沢はいった。「世の中を儚み、文句をいったり腐してみたりする---。

でもそんなことは誰にだってできる。

お前は知らないかも知れないが、いつの世にも、世の中に文句ばっかりいってる奴は大勢いるんだ。

だけど、果たしてそれになんの意味がある。

たとえばお前たちが虐げられた世代なら、どうすればそういう世代が二度と出てこないようになるのか、その答えを探すべきなんじゃないか」

 半沢は続ける。「あと十年もすれば、お前たちは社会の真の担い手になる。

そのとき、世の中の在り方に疑問を抱いてきた君たちだからこそ、できる改革があると思う。

そのときこそ、お前たちロスジェネ世代が、社会や組織に自分たちの真の存在意義を認めさせるときだと思うね。

オレたちバブル世代は既存の仕組みに乗っかる形で社会に出た。

好景気だったが故に、世の中に対する疑問や不信感というものがまるでなかった。

つまり、上の世代が作り上げた仕組みになんの抵抗も感じず、素直に取り込まれたわけだ。

だがそれは間違っていた。

そして間違っていたと気付いたときには、もうどうすることもできない状況に置かれ、追い詰められていた」

 半沢は、少し遠い目をして、嘆息した。

「だが、お前たちは違う。

お前たちには、社会に対する疑問や反感という、我々の世代にはないフィルターがあり根強い問題意識があるはずだ。

世の中を変えていけるとすれば、お前たちの世代なんだよ。

失われた十年に世の中に出た者だけが、あるいは、さらにその下の世代が、これからの十年で世の中を変える資格が得られるのかも知れない。

ロスジェネの逆襲がこれからはじまるとオレは期待している。

だが、世の中に受け入れられるためには批判だけじゃだめだ。誰もが納得する答えが要る」

 「誰もが納得する答え……」

 森山は、それを口の中で幾度も繰り返した。

 「批判はもう十分だ。お前たちのビジョンを示してほしい。

なぜ、団塊の世代が間違ったのか、なぜバブル世代がダメなのか。

果たしてどんな世の中にすれば、みんなが納得して幸せになれるのか? 

会社の組織も含め、お前たちはそういう枠組みが作れるはずだ」

 「部長にはあるんですか」

 森山はきいた。

「こうすればいいという枠組みを、部長はお持ちなんですか」

 「枠組みといえるほどのものはない。あるのは信念だけだ」

 半沢はいった。「だが、それはあくまでバブル世代の、いやもっといえばオレ個人の発想に過ぎない。

しかし、オレはそれが正しいと信じてるし、そのためにいままで戦ってきた」

  「もしよかったら教えてもらえませんか」

 森山は問うた。「それはどんな信念なんでしょうか」

 「簡単なことさ。正しいことを正しいといえること。

世の中の常識と組織の常識を一致させること。

ただ、それだけのことだ。

ひたむきで誠実に働いた者がきちんと評価される。

そんな当たり前のことさえ、いまの組織はできていない。だからダメなんだ」

 「原因はなんだとお考えですか」

 森山はさらにきいた。

 「自分のために仕事をしているからだ」

 半沢の答えは明確だった。

「仕事は客のためにするもんだ。ひいては世の中のためにする。

その大原則を忘れたとき、人は自分のためだけに仕事をするようになる。

自分のためにした仕事は内向きで、卑屈で、身勝手な都合で醜く歪んでいく。

そういう連中が増えれば、当然組織も腐っていく。

組織が腐れば、世の中も腐る。わかるか?」

 真顔でうなずいた森山の肩を、半沢は微かに笑ってぽんとひとつ叩いた。

「結果的に就職氷河期を招いた馬鹿げたバブルは、自分たちのためだけに仕事をした連中が作り上げたものなんだよ。

顧客不在のマネーゲームが、世の中を腐らせた。

お前らがまずやるべきことは、ひたすら原則に立ち返り、それを忘れないようにすることだと思う。

とはいえ、これはあくまでバブル世代であるオレの仮説であって、きっとお前はもっと的確な答えを見つけるはずだ。

いつの日か、それをオレに話してくれるのを楽しみにしている」

-------------引用終了

著者が、半沢直樹をして語らしむ---といったところでしょうか。

世代論でラベリングするとわかりやすく見えてくることが多いんですが、同時に「個人」をしっかりと見なくなる。

それはどの世代に属している人に対しても同じで、フィルターなしでちゃんとその「本人」を見ること。

半沢直樹はそれを実践しているんですね。


あんまり小説って読まないんだけど、エンターテイメント小説からもインスパイアされることって、あっちにも、こっちにもゴロゴロ・・・・・・。

結果、勉強になりました。

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今日の南アルプス(↓11:00撮影)。今朝~10時過ぎまで霧の中だったんですが、晴れました!

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今日のストームグラス(↓)。

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