「予備校の教室から」というコピーとともに、受験参考書業界に新風を吹き込んだ「実況中継シリーズ」。

その衝撃は今も忘れません。

受講料を払ってその場(予備校の教室)にいる受験生しか知り得ない奥義(大げさですねぇ)を、活字起こしして出版するというスタイルは、その後定着し今ではいろんなところが出版しています。

講師の中からもヒーローが生まれました。

細野真宏氏は代表的な人物です。

このスタイル、一般書籍にも波及しており、予備校講師の方が「わかりやすく」解説するというタイプの入門書に多い形式です。

で、

『やりなおす経済史』 蔭山克秀著(2014) ダイヤモンド社刊

受験生に「わかりやすく伝える」そのためには、効果的な「たとえ話」にしてみると、聞いている方も腑に落ちる---そんな例が満載です、この本。

こんなふう(↓)、です。

-------------以下引用(強調BLOG主)

TPPは「環太平洋経済連携協定」、つまり太平洋をぐるりととりまく国々の間で結ぼうとしている、貿易自由化の協定だ。

もともとTPPは、シンガポール・チリ・ニュージーランド・ブルネイという小ぢんまりした国々だけで結んだ、とても牧歌的な「四か国協定(P4協定)」にすぎなかった。

ところがそこに、いきなりに巨漢の乱暴者が「俺も入れろ!」と割り込んできた。

アメリカだ。

しかもアメリカは、「お~い、お前らも来いよ」と手招きして、ゴロッキ仲間のカナダやメキシコも招き入れた。

これはイヤな空気だな。

まるでおとなしい草食系男子たちがひっそりやっている手芸部に、いきなり黒光る清原が現れ「おう、俺にも編みモン教えてくれや」とすごんだ上、「お~い、お前らも来いや~」と手招きして、外でゲハゲハ笑っている男気ジャンケンのメンバーを呼び寄せたような最悪感だ。

しかも清原は、部室の外の廊下を目を伏せてなるべく足早に通り過ぎようとする「キテレツ大百科」の勉三さん(日本)の姿を目ざとく見つけると、行く手をドンと足で遮って凄んだ。

「おう、お前も当然編みモンすんのやろな?」

TPPは、アメリカが太平洋での経済的覇権をかけて、中国と主導権争いをやるための武器だ。

当然、経済力の強い国を仲間に引き入れたい。

なら当然、ここで的にかかってくるのは、GDPが米中に次ぐ世界第3位である日本だ。

そう、実はこの流れ、勉三さんは最初から清原に狙われていたのだ。

しかし、同じことは当然中国の側も考える。

だから、中国は中国で「日中韓FTA」(自由貿易協定)を主導し、何とか日本を引き入れようとする。

つまり日本は今、選挙時の公明党と同じような、覇権を左右するキャスティングボートを握っているのだ。

日本は、2012年からTPP交渉参加を表明しつつ、ほぼ同時期から日中韓FTAの交渉も開始している。

つまり、二つを並行させて協議しているのだ。

-------------引用終了

戦後、「悪の学問!?」とされてきた地政学(GEOPOLITICS)的な観点でみると、このへんのことはクリアに見えてきます(ナチスによって地政学に「色」がついてしまったもんだから、日本ではおおっぴらにできなかった戦後、アンダーグラウンドではちゃんと国家戦略をそーゆー眼で見ていた国々があっちにも、こっちにも)。

地図帳を出して、見てみましょう。

BRICS(本の中ではBRICs)に関しても、わかりやすいです。

-------------以下引用

アジアNIESはたとえて言うなら、高校3年の小柄でキビキビした技の切れ味抜群の黒帯の先輩だ。

対してBRICsは、お母さんに連れられて入部してきた、190センチで体重120キロの、白帯の1年生だ。

最初のうち、白帯の1年生は、小柄な黒帯の先輩にまったく歯か立たない。

面白いようにコロコロ転がされる。

ところがある時点を過ぎると、先輩はこの1年生を投げられなくなり、逆に時々、払い腰や大外で巻き込まれそう
になってヒヤッとする。

そして、その1年生が3年生になる頃には完全に立場が逆転し、もう小柄なOB先輩では太刀打ちできなくなってバンバン投げられるようになる。

わかるでしょ、悲しいけど、技やスピードをいくら磨いたところで、圧倒的なパワーや体格の前では無力なんだ。

「柔よく剛を制す」には限界がある。

これが通用するのは、剛がボンクラな間だけだ。

剛が人並みよりちょい上の技とスピードを身につけただけで、もう柔には打つ手はない。

これと同じように、これから我々(日本やアジアNIES)は、だんだんBRICsに勝てなくなり、ついには明確に負け始める。

その証拠に、日本はすでに中国に、2010年GDPを抜かれてしまった。

これからこういうことはどんどん増え、ついには2050年には、BRICsのすべてが日本のGDPを抜くと予測されている。

-------------引用終了

高校生(受験生)でもわかるたとえ話を例に出し、それを裏付けるデータで解説する。

ちゃんと、学んだことがストーリーとして定着するという、王道の教授法です。

こーゆーことをすれば、無味乾燥な教科書もちゃんとオモシロクなるんでしょうね、きっと。

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今日の南アルプス(↓11:00撮影)。同じ県内でも北部は今日も大雪警報発令中です。こっちは晴れてるんだけど、ね。昨日の積雪が、伊那山地の山並みに見事に接戦、いやもとい雪線を引いています。

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今日のストームグラス(↓)。

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