先日、一気に読み終えた本があります(↓)。

『「学力」の経済学』 中室牧子著(2015) ディスカヴァー・トウェンティワン刊
売れているみたいです(アマゾンの教育学一般関連書籍ジャンルで第1位の売れ行き!)。
その中で触れている「全国学力テスト」に関しての指摘は、マスコミはなかなか報じようとしません。
因みに、今年の結果(↓)。
文科省のページは、こちら。

ご丁寧にも、これを偏差値化して47都道府県を「塗り分け」てあるものまで存在します(↓)。

秋田県と北陸3県が上位の常連で、沖縄・大阪・滋賀が下位の常連。
でもね、と著者の中室さんは次のように指摘します。
-------------以下引用(長いですぜ、強調は著者)
学力の分析の本質は、アウトプットである学力とインプット-家庭の資源や学校の資源-の関係を明らかにし、何に重点的に投資をすれば子どもの学力を上げられるかを示すことにあるのです。
しかし、私の知る限り、そのことを正しく理解している自治体や教育委員会は少なく、単純に都道府県別順位に一喜一憂してしまっているように見受けられます。
(中略)
多くの自治体や教育委員会は、全国学力・学習状況調査の都道府県別順位が発表されるたびに、正答率が低い問題にどのような指導法や教材などが有効かを詳細に分析した報告書をまとめて公表したりしています。
そうした分析は、暗に正答率が低いことの原因が指導法や教材にあるという前提を置いていることになりますが、本当に学校の資源の中の、指導法や教材がそんなに大きく学力に影響しているのでしょうか。
(中略)
私は、指導法や教材の効果を分析すること自体を否定するわけではありません。
しかし、正答率が低いことの原因が何であるかを突き止めることをせずに、指導法や教材をどのように改善すべきかを議論するというのは、分析の重要なステップを省略してしまっているといわざるを得ないのです。
(中略)
学力には、家庭の資源と学校の資源の両方が影響を与えており、そして家庭の資源の影響はかなり大きい-このことを正しく理解せずに、学カテストの結果を学校名とだけ紐づけると、本来学校や教員が負うべきでない責任を、彼らの責任にしてしまいます。
これでは、正しく学校や教員にプレッシャーをかけ、学校間や教員間での健全な競争をもたらすことにはなりません。
むしろ、有害である可能性すらあります。
(中略)
もしも順位を公表するなら、学校名だけでなく、その学区の生活保護率、就学援助率、学習塾等事業者の数や売り上げなど、家庭の資源を表す情報も紐づけて公表すべきです。
そうすれば、学力が学校の資源だけで決まっていないことは一目瞭然ですし、「子どもの学力を上昇させるためには、学校だけでなく、保護者や地域が力を合わせて取り組んでいかなければならない」というメッセージを発信することにもつながるでしょう。
-------------引用終了
東京や神奈川、埼玉が成績上位にこないことにも理由があって、それはこの「全国学力テスト」が「全国の公立小中学校」は全参加だけど、私立小中学校は、「自由参加」のためなんですね。
東京都などは私立中学校在籍率が約1/4超なので、そこに在学しているけど、学校がこのテストに参加していなければ、生徒の成績は反映されていません。
じゃぁ、彼らも加えた全国規模のテストってあるのかというと、これがあるんですね。
そう、四谷大塚の「全国統一小学生テスト」が。
著者の中室さんはもそれに注目して、ほら(↓)。

「あぁ、やっぱりねぇ~。」
だから、
学カテストの結果だけを見て、それをもとにして都道府県単位で競なんて(つまり、このテストでの順位を上げるための施策の数々)、まさに「木を見て森を見ず」の典型です(それがわかって、やってんだったら確信犯じゃん)。
このテストを実施するのにかかっている費用は大凡50億円だそうな。
そこで得られたデータを活かしているかというと、実はこれは「意見・意識など、事実に該当しない項目を調査する世論調査など」という扱いになっていて、一般の研究者はこのデータを学術研究に用いることができないんだって(x_x)。
(このデータにアクセスできるのは、文科省とその関連機関に所属する研究者---御用学者、だけなんだとか。もうオワッテマス、ね。)
-------------
今日の南アルプス(↓11:00撮影)。

今日のストームグラス(↓)。

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