北陸三県の「豊かさ」に注目が集まり、今やたくさんのレポートや書籍が刊行されています。
昨年末読んだ本で、直接この3県の取り組みとは関係ないけれど、オモシロかったエピソード(↓)。
----------引用開始(強調BLOG主)
教育を大学入試という面から変えるため、旧文部省の二人は、ケンブリッジ大学の入学事務局、さらにガートン・カレッジの入学担当教員であるジュリア・リレイ女史の部屋を訪ねた。
リレイは、ノーベル生理学・医学賞を受賞したアーチボルド・ヒル博士の孫であり、自身は物理学者である。
祖父のアーチボルドは、ヒトラーの迫害から逃れてきた科学者たちを守ったケンブリッジ大学の理事会メンバーの一人としても知られる。
日本からやってきた官僚が入試のシステムを一通り聞いた後、質問をしたのは面接についてだった。
ケンブリッジを志願する若者たちは大学入学資格試験で高得点を得ており、それまでの学校での成績や内申書も申し分のないレベルにある。
その中から面接で合格者を選ぶのは、至難の業に思える。
リレイはこう言った。
「面接では志願者を絞るために、別の点を見なければなりません」
一人あたり最低二回は行われる面接で、知識を問うてもあまり意味がない。
もっている知識を、さまざまな状況で応用できるかが問われる。
例えば、アルジェリアに対するフランスの植民地政策について質問をされて、教科書どおりに答えるようではケンブリッジが求める学生とは言えない。
あるいは面接官が目の前の志願者を無視して、新聞を読みふけるなど芝居がかった面接を行うことすらある。
要は、対応を見るのだ。
若い日本の官僚はリレイに聞いた。
「大学が合格者を選ぶ際に、ポイントとしているのは何ですか」
すると、彼女はひと言で即答した。
「グッド・エキセントリシティ」
良い奇人--。
教科書を超えた発想と対応ができる若者をケンブリッジは求める。
それを「エキセントリックな良いヤツ」と表現したのである。
リレイからこの言葉を聞いた瞬間、若い官僚は「身震いした」という。
「さすが成熟社会の国は違う」
彼が感嘆したのは、今になってみれば納得できることだった。
その後、頑張って働けば右肩上がりに成長する時代は終わり、前例や規定通りの手法は通じなくなるからだ。
生きるためには考え方を変えなければならなくなり、特に社会を引っ張るリーダーには見たことのない未来を生む発想力が求められるようになる。
日本に決定的に不足しているものこそ、こうした環境の変化に対応できる「良い奇人」だ。
その転換点が、二年後の一九九八年に訪れるとは、当然ながら、この時、誰も気づいていない。
九八年、日本の社会は戦後築いてきた土台が、大きく崩れたのである。
『福井モデル』 藤吉雅春著(2015) 文藝春秋刊 より
----------引用終了
1998年は、日本の名目GDPがピークアウトし、成長が止まった---それ以降は右肩下がりが今まで続く、そんなイメージ---まさに転換点だったんだそうな。
1年間の自殺者総数がいきなり1万人も増えて、3万人に跳ね上がったのも1998年。
20年前、そんな実感が私にはあっただろうか?
今という時点で振り返ってみると、「そう、あのときがそーだったんだ」と感じる人の方が多いように思うんですけど。
でも、きっと、
引用箇所で指摘されている「良い奇人」---そーゆーふーな人たちは日本にも少数だけれど存在していて、1998年以降、自分には見えていた「未来」を信じて、チャレンジしてきたんだと思います。
それが今、ネット・ビジネスを中心にそれ相当の成功をつかんでいるリーダーたちに共通している点ではないでしょうか?
で、
そーそー、「福井モデル」。
鯖江市は今や「データ・シティ」と称される自治体ですが、遡れば、めがねフレーム生産で有名だったものの「日本で最も早く中国にやられた町」という過去があっての、「今」なんですね。
さらに、
福井県では、
「やはり一向一揆に失敗したからじゃないでしょうかね」
という話をする人が多いんだそうな。
戦国時代に浄土真宗本願寺派を中心に、僧侶や農民、商工業者などが一揆を起こしたものの、織田信長に鎮圧された---そのことを指しています。
越前、福井県の「底つき」は、ここから始まっているというのです。
僧侶たちは寺を失い、失業。信仰を守るために始めたのが、学校のような道場で、これが学ぶという習慣として、戦後も続き、今も残っている---ということらしい。
先人たちからのバトンが「今」に続いていることの自覚と、それを「今」に生かす末裔たちの工夫。
お役人や地方議員の皆さんが視察をしてきて、同じような真似事をしても、「そこ」は福井じゃないんだから、上手くいくこと、あるわけないじゃんって、トーシローの私でもわかりますゼ。
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今日の南アルプス(↓11:00撮影)。

今日のストームグラス(↓)。

オ・マ・ケ(↓)。いただきもののモロゾフのチョコ。ありがとうございます。

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